Amazonのレコメンデーションを用いた探索(『テヅカ・イズ・デッド』)

先日、『ユリイカ』の6月号(マンガ批評の号)を立ち読みしてたら、少し気になる記述があった。それは東浩紀伊藤剛の対談の中にあったのだけど、伊藤は『テヅカ・イズ・デッド』で、東と夏目房之介を結びつける仕事をしたとか。私にとってそのこと自体はどうでもいいんだけど、その中で以前はamazonでその二人(東と夏目)を一緒に買う人はいなかったと言っていたと記憶している。うろ覚えだけど。

それを読んで、なるほどAmazonのレコメンデーションを用いて、読者というか消費者の購入履歴から批評的な立ち位置を考えられるかもしれないと考えたわけだ。要するに、ある商品からレコメンデーションを辿っていくと、どのようなものに辿りつくのか、ということである。これは批評を内容からではなく、消費のされ様から見ていこうとする試みといえるだろうか。そんなわけで、一般化のためにもここでは批評作品を「商品」と呼ぶ。

さて、簡単にアルゴリズムを示す。

  1. 対象とする商品のASINを取得する。
  2. amazon web services(API)を用いて、上で取得したASINに対して推薦する商品を求める。
    • 具体的にはSimilarityLookupを用いた。この方法では10件の商品が推薦される。CartSimilaritiesを用いてSimilarProductsやSimilarViewedProductsを取得する方法も考えられる。
  3. 以下繰り返す。
    • 探索の終了条件にはamazon距離を用いた。

amazon距離とは、ある商品からレコメンデーションを何回介して他の商品に辿りつけるかで定義する。一回で辿り着ける、言い換えればその商品のレコメンデーションに表示されている商品との距離は1となる。なお同一商品間の距離は0とする。

以下『テヅカ・イズ・デッド』からamazon距離3の範囲内の商品を記す。計測したのは2008年9月5日の21時40分から45分(JST)の間。

Distance Title
0 テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ
1 現代マンガの全体像 (双葉文庫―POCHE FUTABA)
1 マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003
1 マンガの居場所
1 「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画
1 マンガ産業論
1 マンガは変わる―“マンガ語り”から“マンガ論”へ
1 マンガ表現学入門
1 コンテンツの思想―マンガ・アニメ・ライトノベル
1 網状言論F改―ポストモダン・オタク・セクシュアリティ
1 マンガはなぜ面白いのか―その表現と文法 (NHKライブラリー (66))
2 マンガの力―成熟する戦後マンガ
2 教養としての〈まんが・アニメ〉 講談社現代新書
2 マンガの深読み、大人読み (知恵の森文庫)
2 手塚治虫の冒険―戦後マンガの神々 (小学館文庫)
2 手塚治虫=ストーリーマンガの起源 (講談社選書メチエ)
2 夏目房之介の漫画学―マンガでマンガを読む (ちくま文庫)
2 アニメーション学入門 (平凡社新書)
2 戦後マンガ史ノート (精選復刻紀伊国屋新書)
2 漫画原論 (ちくま学芸文庫)
2 日本のアニメ全史―世界を制した日本アニメの奇跡
2 サルの正義 (双葉文庫)
2 これがアニメビジネスだ
2 戦後マンガ50年史 (ちくまライブラリー)
2 マンガの深読み、大人読み
3 「美少女」の現代史 (講談社現代新書)
3 戦後「日本マンガ」論争史
3 現代日本のアニメ―『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで (中公叢書)
3 Reinventing Comics
3 日本のアニメ―終わりなき黄金時代 (NEKO CINEMA BOOK―JAPANESE SERIES)
3 漫画の構造学!―マンガ・まんが・漫画・劇画・万画・コミック・ポンチ絵「分析ノート」
3 物語消滅論―キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」 (角川oneテーマ21)
3 手塚治虫論
3 日本アニメ史学研究序説
3 アニメーションの世界へようこそ―カラー版 (岩波ジュニア新書)
3 日本アニメーションの力―85年の歴史を貫く2つの軸
3 貸本マンガRETURNS
3 マンガと「戦争」 (講談社現代新書)
3 アニメビジネスがわかる
3 戦後少女マンガ史 (ちくま文庫 よ 19-1)
3 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか (角川oneテーマ21)
3 「おたく」の精神史 一九八〇年代論
3 サブカルチャー文学論 (朝日文庫 お 49-2)

実装にはRubyを用いた。理論的には10枝の木構造となるためノード数は10^3+10^2+10^1+10^0=1111となるはずだが、重複があるために90程度になっている。表中の距離は最小距離。

分析するのも面倒なので、ざっと見た印象でしかないけど、マンガ表現論(?)の本が多いような気がする。

リンク構造を視覚化する技術を用いてグラフを作ってみようかとも思うけど、これも面倒なのでパス。サーバがあればウェブサービス化していろいろと調べてみたいけど、リソースがないのでどうしようもない。

上で得られた商品をスコアリングしてみた。スコアはamazon距離の逆数の和としている。ただし距離0(一番最初の商品)は1とする。例えば、ある商品が距離1に1回、距離2に3回現れた場合、スコアは1.0*1+0.5*2=3.0である。

Score Title
5.16666666666667 マンガ表現学入門
4.66666666666667 マンガはなぜ面白いのか―その表現と文法 (NHKライブラリー (66))
4.33333333333333 マンガ産業論
4.33333333333333 マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003
4.16666666666667 現代マンガの全体像 (双葉文庫―POCHE FUTABA)
4.16666666666667 マンガの居場所
3.16666666666667 漫画原論 (ちくま学芸文庫)
2.33333333333333 マンガの力―成熟する戦後マンガ
2.0 テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ
1.66666666666667 戦後マンガ史ノート (精選復刻紀伊国屋新書)
1.66666666666667 戦後マンガ50年史 (ちくまライブラリー)
1.66666666666667 マンガの深読み、大人読み (知恵の森文庫)
1.33333333333333 「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画
1.33333333333333 夏目房之介の漫画学―マンガでマンガを読む (ちくま文庫)
1.33333333333333 手塚治虫の冒険―戦後マンガの神々 (小学館文庫)
1.33333333333333 アニメーション学入門 (平凡社新書)
1.33333333333333 マンガは変わる―“マンガ語り”から“マンガ論”へ
1.16666666666667 日本のアニメ全史―世界を制した日本アニメの奇跡
1.0 網状言論F改―ポストモダン・オタク・セクシュアリティ
1.0 コンテンツの思想―マンガ・アニメ・ライトノベル
0.833333333333333 これがアニメビジネスだ
0.833333333333333 マンガの深読み、大人読み
0.666666666666667 戦後少女マンガ史 (ちくま文庫 よ 19-1)
0.666666666666667 漫画の構造学!―マンガ・まんが・漫画・劇画・万画・コミック・ポンチ絵「分析ノート」
0.666666666666667 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか (角川oneテーマ21)
0.5 手塚治虫=ストーリーマンガの起源 (講談社選書メチエ)
0.5 教養としての〈まんが・アニメ〉 講談社現代新書
0.5 サルの正義 (双葉文庫)
0.333333333333333 「美少女」の現代史 (講談社現代新書)
0.333333333333333 日本のアニメ―終わりなき黄金時代 (NEKO CINEMA BOOK―JAPANESE SERIES)
0.333333333333333 戦後「日本マンガ」論争史
0.333333333333333 手塚治虫論
0.333333333333333 日本アニメ史学研究序説
0.333333333333333 アニメーションの世界へようこそ―カラー版 (岩波ジュニア新書)
0.333333333333333 現代日本のアニメ―『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで (中公叢書)
0.333333333333333 Reinventing Comics
0.333333333333333 マンガと「戦争」 (講談社現代新書)
0.333333333333333 アニメビジネスがわかる
0.333333333333333 物語消滅論―キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」 (角川oneテーマ21)
0.333333333333333 日本アニメーションの力―85年の歴史を貫く2つの軸
0.333333333333333 貸本マンガRETURNS
0.333333333333333 「おたく」の精神史 一九八〇年代論
0.333333333333333 サブカルチャー文学論 (朝日文庫 お 49-2)

クエリとして用いた『テヅカ・イズ・デッド』のスコアがあまり振るわないのは言わずもがな。